いただきもの小説

閲覧、拍手ありがとうございます~~!
いただきもの小説いただけたのでワガママ言って載せさせていただきます(ホクホク)!

つづきからどうぞ…!

視線の先の幸福

今日は厄日だ。隼人はそう思った。

その日は朝から忙しかった。

急にヤマザキから呼び出しが入ったと思えば、やれインベーダーが出ただの

やれ機材が壊れただの、挙句の果てには職員どもが暴動を起こしただのと半日拘束され

朝飯はおろか昼のコーヒーブレイクさえ取れず、やっと食堂に来れたのは夕方になってからだった。

遅い夕食の支度をしているのだろう。厨房では職員がせわしなく作業している。

その作業のたびになんともいい香りが漂ってくるのに、その横ですっかり冷えて硬くなった飯を

無理やり噛み潰して飲み下すのはなんとも居心地がわるかった。

テーブルの上のトレイには、同じように冷めて硬くなったから揚げと、申し訳程度のキャベツがあったが、

食欲がわかずそのままになっている。

何とかして詰め込んでおかなければと憂鬱な気分になっていると、見慣れた男が食堂に入ってくるのを視界の隅に見た。

全身を覆うベージュのロングコートに、重力を無視したように逆立つ赤いマフラー。

上背があるせいで体格が良く見えるが、一皮むいてみればその身は細くしなやかで、少年のような体を持っている。

一見頭がいいようには見えないのに、自分たちの秘密の関係を、周囲に決して気取らせない強かさを持った男。

無二の親友でもあり恋人でもある男。流竜馬だった。

竜馬はまっすぐにこちらにやってくると、自分を見下ろすように正面に立った。

「……何か用か」

隼人は見惚れていたのを誤魔化すように、わざと視線を外して、ぶっきらぼうに言った。

だが竜馬は答えることなく正面の席に座り、じっと隼人の顔を見つめてくる。

(なんだこれは)

無言で見つめてくる竜馬に隼人は居心地の悪さを感じ、箸を止める。

「やめてくれ そんなに見られていたら食べにくい」

「気にせず食えばいいだろ」

そう言った竜馬はさも不機嫌に目を細めた。まるで見せつけるような不機嫌な態度に、ピンときた隼人は

気取られないように竜馬の心に歩み寄る。

「もしかして何かあったか?」

「何も」

ますます不機嫌に、いや拗ねるように口を尖らせた竜馬に隼人は確信する。

間違いない。こいつは自分に会いに来たのだと

(まったく 可愛いところは相変わらずか)

昔は愛情を隠そうともしなかったが、今は違う。

例えるのなら昔は犬で、今は猫だ。

どちらも愛情表現の仕方は違うが、本質は全く変わらない。

犬と猫はどちらも肉食目の生物だからだ。

動かない草ではなく、逃げていく動物の肉を食うことを選んだからには、食える時に食わねばならない

食わなければ飢えて死ぬ。それだけだ。

目の前に居るのは飢えた獣だ、ならば自分のやることは決まっている。

隼人の顔に、心底楽しそうな時に出る悪い笑顔が浮かんだ。

「竜馬 口を開けろ」

そう言った隼人は、なんとなくもったいなくて残していたから揚げを一つ、箸でつまみ竜馬に差し出す。

そして、じっと竜馬を見た。いきなり差し出された肉に、竜馬は明らかに戸惑っている。

「ばっ別に欲しくねぇよ」

「違うのか?俺はてっきり」

「なんでお前から貰わなくちゃなんねぇんだよ」

「ならばなぜここにいるんだ? ん?」

「それは」

そこまで言った竜馬は気が付いた。ここで正直に隼人に会いに来た。

なんて言ってしまえば自分の負けだ。しかし、このから揚げを直接食べてしまえば

間接キスになって隼人が喜ぶから結局負けだ。

どう転んでも隼人の得にしかならない。今日は厄日だと竜馬は思った。

なんとなく会いたくて、わざわざ行ったもののつくづくタイミングが悪くて。

せっかく会えたと思ったら公衆の面前でこんな羞恥プレイを強要してくる。

「どうした?食わないのなら俺が貰うが」

人を貶めるのが大好きで、心底楽しそうに他人をいじめるどうしようもない男。

しかし、それでも好きなんだから仕方がない。

竜馬は意を決して目の前の唐揚げにかじりついた。

そして隼人が驚いてる間に、巧みに箸を避けて食いちぎり、一部が隼人の箸の上に残るように調整する。

隼人があっけにとられているうちに、竜馬は素早く立ち上がった。

「ごちそうさん じゃあ俺は行くぜ」

「ああクソ せっかく取っておいたのに」

「食いたいもんをさっさと食わねぇのがわりぃ」

竜馬はそう言って不敵に笑うと、唇の上に残った肉汁を指でぬぐい、意味深に指をなめ上げた。

「物足りねぇ」そう言いたげな竜馬の態度に、隼人は言外の意味を敏感に感じ取り、体がぞくりと震える。

古人の生み出した物は数あるが、肉欲という言葉は言い得て妙で、よく言ったものだと隼人は思った。

「じゃあな隼人 今晩楽しみにしてるぜ」

「ああ続きは夜だ 覚えておけよ」

一部始終を見ていたとしても、そんな意味だとは夢にも思わないだろう。

粗野な見た目に似合わない悪賢さが、隼人は好きだった。

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しかし運の悪いことは続くもので、その日はインベーダーによる夜襲があり、

その対応をして、さらに竜馬の欲望にも余すところなく応えた結果。

結果、翌日無理がたたったのは言うまでもない。

ほとんど何も食べず、その上に一睡もできなかった結果としては当然である。

倒れた際に竜馬から「お前も人間だったんだな」と言われ、タワーでの語り草になったのはここだけの話

アーガイルさんありがとうございますーーーっ!!
ちょっと遅くなりましてすみません。

れ頭の小ネタが素敵小説になって…どんな、どんな恩返しですか…っ(感涙)
司令、無理しないでください…あなた一人の身体ではございませんので(とかヤマザキさんは素で言いそうだなとか)

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